コチニール色素

コチニール色素

世の中は情報社会、あらゆるものに様々な情報が表示されています。
ふと目を落とすと意味の分からない言葉は何気なく並んでいるものです。
例えば食品表示の中などは知らない言葉が多く潜んでいたりします。食事は毎日の暮らしに欠かせませんから何が入っているのか特に気になってしまいます。
今日お昼に食べたサンドイッチの表示には「着色料(カロチノイド、コチニール)」とありました。
カロチノイドはニンジンやトマトに含まれる赤色の色素の総称です。代表的なものにカロテンやリコピン、β-カロテンなどがあります。この中のβ-カロテンはプロビタミンAとも呼ばれビタミンAの材料にもなります。多くは一般的にもよく耳にする天然着色料です。

一方のコチニール、いったいこれは何から抽出されているのでしょうか?
調べてみると意外な答えが見えてきました。


まずは、最も簡潔な『百科事典マイペディア』の内容を見てみます。
それにしても近年は電子辞書の普及で百科事典がすぐに利用できるようになっておりとても便利です。たくさん並んだ百科事典の背表紙や紙媒体のあの質感、調べているという感覚も好きですが、この簡潔さも捨てがたいものです。
話が脱線してしまいました……。

マイペディアにはこうあります。
カルミンとも。紅色の色素でコチニールカイガラムシの雌からとる。食品、化粧品の色づけや、アニリン染料が合成されるまでは生体組織の染色などに使用。〉
なんと虫から抽出されていたようです
それではこのままコチニールカイガラムシの項を見てみました。
米原産のサボテンに寄生する昆虫で、メスは要約すると楕円形、羽のない2㎜ほどの小ささのようです、オスは細長で羽があるとあります。赤色の身体でエンジムシとも呼ばれるようです。

実は日本にもカイガラムシは生息あり農作物につく害虫として有名です。そもそもカイガラムシと呼ばれる理由はメスの成虫が植物につくと白色の蝋や粉を体の周りに分泌した姿が貝殻を被っているように見えたからと言われています。この形になると脚が無くなり動けなくなるものもいます。
殻に見える白い部分は余分な糖分が排出されたものです。カイガラムシは植物から栄養を取るのですが必要最低限の窒素やリンをとろうとすると、どうしても必要以上の糖分を摂ってしまうことになります。これでは体内のバランスが狂ってしまうので排出するのですが、このとき蝋状の油脂に置き換えて出すのです。
この殻は油脂成分のため雨どころか農薬さえ防ぎます。ちなみにラックカイガラムシに関しては、この蝋の方を集めてニスや錠剤などのコーティング剤に使用することもあるようです。

このコチニールカイガラムシから抽出した色素は発色が良くカーマイン・レーキといった絵具の原料や羊毛などの染色、化粧品、食品着色料といった風に、様々な用途に用いられてきたようです。
当時染料として海外に輸出され大きな利益をあげていたとか……。
近年でも人口着色料に比べ安全な天然着色料として使われることが多いそうです。しかしアレルギーなども報告されているため一概に安全とは言い切れないようです。

ベトナムやタイでは昆虫食が一般的だそうでして、テレビで見ていた時は「虫はできれば食べたくないな……」と思って見ていたのですが、これは気づかないうちにカイガラムシを食べていたことになるのでしょうか……?
それとも色素まで形を変えるともはや昆虫食には入らないのでしょうか。

とはいえサンドイッチはおいしくいただきました。
発色のいいハムと卵の陰にはカイガラムシの知られざる活躍があったようです。

それでは今日はこの辺で失礼します。