中国史入門に陳舜臣さんの『小説十八史略』を読んでみる①。

国史入門に『小説十八史略』を読んでみる①。

 

 中国史を題材とした小説を読むときにどうにも歴史の全体の流れが分かっていればもっと楽しめるのだろうなと思うことがよくあります。

 日本の歴史文学だと日本史に疎いとはいえ、幕末なら坂本龍馬西郷隆盛、戦国なら織田信長豊臣秀吉が出てくればそれだけで親近感が湧くし、時代の流れも縄文、弥生、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、戦国、安土桃山、江戸、そこから明治、大正、昭和、平成と大まかな流れや出来事も頭に入っているので何となくでも余裕をもって楽しめます。

 ところが中国に関しては全くといっていいほど全体の見通しがつきません……。

 元号がどのように推移したのかとか、時々の皇帝が何をしたとか、知っていたとしてもまるで大きな歴史に穴を穿つように細かいものばかりで、しかもその多くがあやふや。これではいけないと思いなおし中国史、特に通史を勉強すれば、何倍も楽しめるとこう考えました。

 こういう知識は一度入ってしまえばその後の関連する分野に応用が利きやすいので、なるべく早いうちにやっておいた方が良いに違いありません。

 

 さて机には『詳説 世界史研究』や『詳説 世界史図録』などもあるが、教科書による勉強というのはなかなか味気がない。いや、もちろん最終的にはこれらも見たいのですが、まずは軽くそして楽しく中国史全体を俯瞰できる作品が欲しい。

 

 そんなとき古本屋で良さそうなものを見つました。それがこの陳舜臣さんの『小説十八史略』。

 本の裏表紙の説明には、

「夏に先立つ幾千年、中国中原に君臨した神々。時代は下り、やがて殷へ。暴君紂王を倒して次なる世界を開いたのは周だった。その周も大動乱をへて秦に統一される。——英雄は芸道に時代に生まれる。大陸も狭しと闊歩したあまたの梟雄豪傑たち、そして美姫。その確執葛藤の織りなす人間模様を活写。〈全六巻〉」

 

 中をぱらぱらとめくると小説になっており、言葉遣いもくだけており大変親しみやすい。

 特に歴史小説はあまりカタカナ語を使わないイメージがあったのだが、作者は自由に使っている。

 例えば「紂王の命令一下、ただちに野外バーベキュー・パーティーがひらかれた。」伍子胥の復讐は、日暮れて道遠く、きわめてストレートであったが、申包胥の楚の滅亡を防ぐ努力も極めてストレートであった。」などと普通に使われていていい感じ。    

 それにしてもバーベキュー・パーティーは初めて見たとき、思わず現代風の景色を想像してしまい何ともほほえましい想像をしてしまいました。

 

 他にも巻頭に主要登場人物一覧、巻末に扱った時代ごとの地図がついており地名を確認できるつくりになっていて、引くうちに大体の人名・位置が頭に入ってきます。

 

 そもそも十八史略は元代につくられた中国史教科書で、編纂した人は曽先之(そうせんし)という人だったそう、『史記』から『新五代史』まで続く正史17種に宋の時代の史書を合わせ中国史の全体像を逸話つきで書ききったものだそうです

 更にその十八史略陳舜臣さんが現代の読者に分かるように解説を入れ、ユーモアたっぷりに再構築したのが『小説十八史略』。単なる訳書でない証拠に冒頭から『十八史略』に載っていない中国の神話から始めてしまうところからして引き込まれますね。

 

 すでに2巻まであっという間に読んでしまいましたが、面白かったエピソードなどを後に紹介しておきたいのですが、また次回にしたいと思います。

 

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