雑草あれこれ_外来生物のしたたかな生存戦略

雑草あれこれ

 

 暖かくなったと思えば急に冷え込む日が続いています。

 本日はそんな中でも臆することなく咲いている雑草に関してお話をしてみようかと思います。

外来種は動物だけではなく植物でも有名なものがあります。雑草として猛威を振るうセイタカアワダチソウや小学校ではおなじみのアサガオも元々は海外からやってきたと言われています。新しい生物が入って来ますと昔から自生していた種(在来種)との勢力争いになります、土地や栄養は限りがあるのでどの種も必死です。

 

人の手によって国内に入ってきた植物が自生すると、帰化植物と呼ばれます。観賞用のものが野生化したり、種がコンテナについていてそれが発芽したり色々な経路があります。

野草として名高いタンポポも、在来種と外来種がしのぎを削りあっているのですが、この戦い単なる領土争いではなく思わぬ方向に進んでいるらしいのです。まずはタンポポについて見てみましょう。

 

もともと日本にいたタンポポニホンタンポポと呼ばれます、外来種には2種類あってセイヨウタンポポアカミタンポポがあります。

ニホンタンポポ外来種の簡単な見分け方を書いておきますで、もし気になる方がいたら確認してみてください。タンポポの花の裏側、茎とのつなぎ目にあたる外総苞片(がいぞうほうへん)が沿っていないのがニホンタンポポ、一方で沿っているのが海外のタンポポです。

さらにセイヨウタンポポアカミタンポポを簡単に見分けるには種子を見てください、綿毛の下についている種が茶色いのがセイヨウタンポポ、より赤みがかっているのがアカミタンポポです。

 

さて外来種から見るとアウェイ戦なので慣れない環境でどのようにして勢力を伸ばすかがカギになります。植物は動けもしないし、進化にも時間がかかる、地域密着型の生物なのですから慣れぬ海外で勝ち抜くにはよほど優れた特性がないと厳しいものがあります。

そんな中セイヨウタンポポがとった行動は積極的にニホンタンポポへアプローチをかけることでした。つまり雑種にあえてなることで慣れない環境に適応しようとしたのです。

もし全滅してしまったら自分たちの種がここで終わってしまう、それよりは半分でも自分の性質を残せる方法を選びました。

 

雑種となったタンポポセイヨウタンポポそっくりになっているため先ほど書いた方法では見分けがつかずDNA検査をして判明することも多いのです。このようにしてじわりじわりとセイヨウタンポポは勢力を伸ばしていっていたのです。

最初から居たニホンタンポポには迷惑千万、セイヨウタンポポはしたたかです。しかしもしこの雑種が海外に進出すればただのニホンタンポポよりも異国で生きていけるかもしれません。果たして種がそのまま残るのが良いことなのか悪いことなのか、なかなか難しいところです。

 

タンポポは食べられる野草としても名高いです。葉だけではなく茎、根、花も食べられるというから無駄がありません。交雑することによって味は変わっているのか?味覚で判断できる人もひょっとしたらいるかもしれません。気になりますね。

 

続いて最初に名前を挙げたセイタカアワダチソウについてもお話を。

セイタカアワダチソウは明治時代も終わりを迎えようとするころに園芸目的で国内に入り、大正末期には野生化が進んでいたといいます。荒れた土地に容易に生えるため戦後土地が開いたところに一斉に広まったそうです。土地の栄養状態が良いとその高さは3~4mほどにもなり、またすごい勢いで増えていくため問題にもなりました。現在でも環境省は重点対策外来種に指定しています。

 

セイタカアワダチソウアレロパシーを行う植物として有名です。アレロパシーとは植物が放出する化学物質が他の生物に阻害的あるいは促進的な何らかの作用を及ぼす現象を意味します。簡単に言えばセイタカアワダチソウは自身で作った除草剤(cis-DME)をまきながらライバルを抑えていたのです。このcis-DEMは他の植物の発芽や成長を邪魔します、こうして独り勝ちの状況を実現していたのですね。

ところがある研究では、自身で出した高濃度のcis-DEMで自分も成長できなくなることが判明しました、何事もやりすぎは良くなさそうです。

 

派手な花をつけるセイタカアワダチソウですが花粉は最小限しか出さず虫に運んでもらい受粉をしています。一時期花粉症の原因と濡れ衣を着せられていたがもともと花粉は少なくコストを最小限にしています。

 

 

生き抜くためにベスト尽くす生物たちの生存戦略には思わずハッとさせられるものが少なくありません。何か困難な問題に直面したら何気なく見過ごしている植物に知恵を借りれば打開策につながるかもしれません。