庭の隅からお送りいたします。⑤命知らず?なスズメに注意

庭の隅からお送りいたします。

5.命知らず?なスズメに注意

 

春先になるとスズメが車道前に躍り出てぶつかりそうになることがある。不思議なことにこの命知らずなスズメが出てくるのは決まって春で、特に5月に入って増えて梅雨に入るともう見かけなくなる。スズメはいくらでもいるのだが危ない遊びに手を出すスズメはとんと見かけない。

暖かい春の日に羽目を外したくなるのだろうか。少し調べてみるとスズメの生活環が関係していたらしい。というのも5月はスズメの巣立ちのシーズンだったのだ。つまり春に命知らずになりたくなるわけではなく、まだ飛び方に慣れていないスズメたちがよたよたと飛んでいくため、あわや事故というようなことになっていたらしい。羽も冬の換羽期までは丈夫でないらしく、生え変わってやっと一人前のスズメになるそうだ。

冬のスズメはふくらスズメとも呼ばれ随分とまんまるとしているが、これも生え変わりたての新鮮な羽毛になったため。

子どものころスズメの羽が生え変わるなんてことは知らなかったため、てっきり冬眠に備えて食べまくっていると考えていたが、よく考えなおしたらいつまでたっても冬眠するそぶりも見せず冬でも愛嬌のある丸い姿を見せていた。スズメに冬眠はないのだと気づいたのは大分後になってからだった気がする。

岩波科学ライブラリーの『スズメ』(三上修)によれば、スズメの寿命は日本での自然条件下では最長2239日とあり6年3カ月の間、生きていたらしい。この本にはさらにスズメの平均寿命を計算しており「100個の卵のうち、ヒナになれるのは60羽、巣立ちを迎えられるのは50羽、翌年まで生き残れるのは10羽、2年目まで生き残れるのは6羽、3年目まで生き残れるのは4羽、4年目まで生き残れるのは2~3話、5年目まで生き残れるのは1~2話、6年目まで生き残れるのは1羽」とある。飼育下では15年生きたらしいので自然環境下はかなり厳しい生活を送っていることになる。ヘビやネコなどの外敵や病気、エサやパートナーの奪い合いなど様々な要因が絡んでいるようだ。

 

「竹に雀」は取り合わせのよいことを意味する慣用句として使われるほどで日本画のテーマになることもある。日本画ではないが伊達家の家紋に「竹に雀」というものがある。左右を丸くアーチを描くように竹が生え、その中に2匹の雀が向き合って配置されているといったもので雀の顔が怒っているようにも見えて愛嬌がある。

上杉家にも同じように竹に雀の家紋「竹に二羽飛び雀」があるが、これは伊達家の「竹に雀」家紋が、14世稙宗(たねむね)が天文11年(1542年)に上杉家より婿引出物として贈られたもので、15世晴宗(はるむね)の代より伊達家で用いられていたため。

伊達政宗はさらにこの「竹に雀」の図案に手を加え、外側に笹の葉が生い茂るようにした「仙台笹」という図案を家紋に用いている。また宇和島伊達家も竹に雀の図案をもとに「宇和島笹」の図案を用いている。

上杉笹は外に笹の葉が出ていない。仙台笹では笹は外に伸び、左右から延びる竹が一体化した竹林になっている。宇和島笹では笹は外に伸び、左右から伸びた竹は上で切れていることで見分けがつくようになっている。面白いことに中で向き合っている雀は左側の雀がお腹を見せて飛び、右側の雀が背を見せて飛んでいる姿になっていることが多い。これは左が阿形、右が吽形を意味しているとのことだが、上杉笹では左の雀が口を閉じており、右側が口を開けている。阿吽は梵字における口を開ける1番目の音である「阿」と最後の口を閉じる「吽」を意味し「始まりから終わりまで」つまり「万物」を意味しているという。とすると、元々は左の雀が吽形で、右の雀が阿形になるはずなのだが……。宇和島笹では左側の雀が口を開け、右側が口を閉じている。区別をつけるために敢えて逆にしたのだろうか?竹に雀の紋はバリエーションがあり興味は尽きない。今は資料がないのでまたじっくりと調べてみたい。

 

スズメはいま急速に数を減らしているらしい。

これといった原因は不明なようだが、様々な仮説があげられており、隙間のない建造物の増加による巣を作れる場所の減少、えさ場になる空き地の減少、ネオニコチノイド系の農薬による被害、コンバインの使用による効率化でスズメの取り分が減少したなどが考えられているそうで意外なところに影響が出ているようだ。

 

ひょっとしたら数十年後にはスズメは滅多に見かけない鳥になっている可能性もある。環境の変化は何気ない日常の中で気づかないうちに進行していって、気づいた頃には取り返しのつかないことになっているのかもしれない。

 

参考文献

『スズメ つかず・はなれず・二千年』、三上修、岩波書店

https://www.amazon.co.jp/スズメ――つかず・はなれず・二千年-岩波科学ライブラリー〈生きもの〉-三上-修/dp/4000296132