庭の隅からお送りいたします。⑦寒い冬を越すためのロゼッタ

庭の隅からお送りいたします。7.寒い冬を越すためのロゼッタ

 木枯らし一号が吹きましたね。

 これは秋の暮れから冬の始まりに吹く木枯らしにおいて、風向きが北から西北西からのもので風速が8m/s以上のものを言います。西高東低の冬型気圧配置で吹く北風なので寒さを感じさせ、冬に本格的に入って来たという感じがします。

 強い風が吹き、日光は弱まり、雪や霜が地表を覆う冬。茶色くなった枯れ葉が舞っています。そうした冬にも庭にはところどころ緑が見えます。厳しい寒さを生き延びるための知恵がそこにはあります。

 

 なかでも冬を越す植物に見られるのがロゼットという葉の出し方です。ロゼット(rosette)はバラ(rose)がその名前の由来です。茎が伸びず地面に接して放射状に延びた葉っぱがバラのように見えることからこの名前がつきました。

 一年中ロゼット形式の葉を持っているのがタンポポそれにオオバコ、冬だけをロゼットで過ごすのはナズナオニタビラコ、アレチノギク、それにキャベツやダイコンの葉もあります。これらの植物は春になるまで茎をのばさず低く広く広がって行きます。そろそろいいかなという季節になると茎をのばし、そして花をつけるのです。

 春先から夏において植物は日光を効率よく取るために背を伸ばします。庭に生やしたシソも最初から日光に当たっていたものよりも、最初日陰に居たものの方が結果的に大きくて立派なものになりました。ですからロゼットは日光を奪う敵のいないところでとる戦略となります。

 

 寒い冬においていかにして温かさを保つかは死活問題となります。わずかな日光を効率的に集め、そして得られたエネルギーをできるだけ長く保つことが厳しい冬を生き延びる条件となります。

 ロゼットになると植物はできるだけ平らで大きな葉っぱを伸ばしていきます。そうすることで太陽の光をたくさん受けるわけです。しかし面積を広げてしまうと一つ問題が生じてしまいます。それはせっかく集めたエネルギーが冷たい風によって持っていかれてしまうということです。

 哺乳類や鳥類は恒温動物なので、持っていかれても細胞で熱を生み出すことができますが、植物ではそうは行きません。そこでロゼットでは葉を地面にぴったりつけて葉の裏面を空気から隠すようにしました。太陽光が当たっているうちは地面も温まっていますからこれならエネルギーの消費を抑えることが出来ます。

 また寒い明け方には霜が降りますが、同じように表側にのみ霜を受けて、裏側は守れるようになっています。そしてまた日が上がれば霜は自然と溶けていくわけです。

 

 寒い冬にも関わらず日中には猫や犬が日向ぼっこをしているのを見かけることがあります。寒いからと言って部屋に籠ってこたつに入るのも良いですが、外に出て地べたに座り思いっきり日光を浴びて見るのもいいかもしれません。本当は地面にふせって熱を感じるのが一番ロゼットに適しているのですが人目が気になって未だにできていません。

 

 寒さをうまくしのいでいる植物はこれだけではありません。例えばフクジュソウでしょうか、フクジュソウは初春に花をつけるため元日草の名もあります。毒があるのですが若芽がフキノトウと間違えられることもあるそうです。

 フクジュソウは冬眠型の植物です。春先に花をつけ、夏にせっせと光合成をし、そのエネルギーを球根に集めると、それを残して秋から冬には枯れてしまいます。そして再び春に球根から芽が出て姿を見せるのです。春から夏だけ姿を見せる植物はスプリング・エフェメラル(直訳で春の短命な植物)と呼ばれることもあります。

 このフクジュソウ雪の中で小さな黄色い花がつけるのですが、その形がパラボラアンテナのようになっていて太陽光の熱をため込む形状になっています。この熱によって虫を集め花粉を媒介してもらっているのです。この季節に活動する昆虫には蜜よりも、この暖かさの方が魅力的なのかもしれません。

 

 以上庭からお送りいたしました。