アリによく似た生き物② アリガタハネカクシ

アリによく似た生き物として前回はハエトリグモの仲間であるアリグモをとりあげました。

今回も見た目がアリによく似た生き物であるアリガタハネカクシを紹介します。

 

アリはハチ目アリ科の昆虫ですが、アリガタハネカクシはカブトムシやカミキリムシが属する甲虫の仲間です。そのためよく見ると腹の上部分に堅い外骨格(鞘翅)が見えます。

甲虫の多くは胸の部分をすべて覆うほどの大きさの上翅(これが鞘翅)があり、その下に後翅が畳み込まれています。これはテントウムシやカナブンを想像していただければわかりやすいかと思います。色のついた堅い翅が前翅、その下から覗く透明な翅が後翅になります。

アリガタハネカクシを含むハネカクシの仲間は、この前翅がとても小さいのです。そのため胸の半分以上が翅に覆われずに剥き出しになっています。名前の由来ですが、この小さな前翅の下に空を飛ぶのに十分な大きさの後翅を器用に畳み込んでいることから、まるで翅を隠しているようだと言われてこの名前が付いたそうです。

一方のアリは甲虫のように鞘翅を持っていませんので、翅は隠されておらず透明のものだけが見えることになります。

 

アリガタハネカクシの中でも有名なものにアオバアリガタハネカクシが居ます。

この虫は体内にペデリンという毒を持っているため、何も考えずにたたいたりしてしまうと後々体液がついた部分がかぶれて線状皮膚炎になってしまいます。

ちなみにアオバアリガタハネカクシ自身はペデリンを合成することはできません。実はこの化学物質を作っているのは、アオバアリガタハネカクシの中で暮らしている細菌なのです。このような細菌に場所を提供する代わりに、特殊な能力を受け取っているような関係は自然界では多く見受けられます。例えば木を食べてしまうシロアリは、消化酵素を細菌につくってもらって初めて成立していますし、植物でもマメ科のものは根に根粒菌を住まわせることで代わりに地中の窒素成分を利用できるようになっています。

面白いことにペデリンの合成が体内で行われるのはメスの成虫だけで、幼虫のときや、オスに至っては成虫になっても作ることはないそうです。とはいっても油断は禁物、母親からもらったペデリンを大事に持っているのでペデリンがないわけではありません。

 

このペデリン、皮膚をかぶれさせるだけの厄介者かと思いきや、まったく別の利点があったことがわかり注目が集まっています。それは抗腫瘍作用です。腫れをおこすと思われた物質がガンをはじめとした腫瘍を抑える機能を有していたようなのです。

 

果たして毒をもって毒を制すことは可能なのか、今後の展望が気になります。

今回はここまでで失礼します。ここまで読んでいただきありがとうございました。