アリによく似た生き物③ シロアリ

人間は様々な物を食べて毎日を過ごしています。三大栄養素に数えられるのは炭水化物、タンパク質、脂質です。これらの物質は体内に入ると特定の酵素によって分解され(異化)、体内に必要な形に変換(同化)され利用されています。

 

よく耳にする栄養素に食物繊維と言うものがあります。植物の細胞壁に含まれるセルロースや、腸内細菌が利用するオリゴ糖、エビやカニなどの外骨格であるキチンなどがあります。これらは平たく言うとどれも糖分の一種になります。糖分が長く連なり複雑な構造をしているのです。

実はこの食物繊維は人間には分解できません。というのもこれに対応する消化酵素を人間は持ち合わせていないからです。もし分解できるとすればそれは体内に共生している細菌の力によります。食物繊維はそのままで体内の異物を外に運んだり、血圧を正常にしたりする効果を持っているのです。

 

さてそんな分解が難しい食物繊維を敢えて主食にしている生き物もいます。草食動物にとっては、そこらへんに生えている草、それの構成要素の細胞壁を作るセルロースから栄養を取り出せるようになり食糧に困ることはなく、生活はかなり楽になります。先ほども述べた通り人間はいくら草を食べてもセルロースから栄養を得ることはできません。草を食べて、それを効率的に栄養へ変換した動物を食べる必要があるのです。

 

セルロースを特に好む昆虫にシロアリが居ます。名前のとおりアリに似た姿で白(実際には黄ばんだ白)っぽい姿をしています。細かく見ていきます。まず頭ですが。アリは目の高さで前方に触覚があるのに対し、シロアリは顎と同じ高さでアリよりも横側に触覚が出ています。アリには大きな複眼がしっかり見えますが、シロアリでは非常に小さい目がついているかないことがあります。また胸はシロアリの方が小さく、代わりに長めの腹を持っています。どちらも群れで暮らし役割分担を決めている真社会性昆虫でもあります。

全体的には似たもの同士なのですが、実はシロアリはアリよりもゴキブリに近い種なのです。このように別の種がある機能を達成するにあたって同じような特徴を持つことを収斂進化と言います。

まさにセルロースが大好物のシロアリですが、やはりその分解には共生している細菌の力が必要なようです。このセルロースを効率よく利用可能なエネルギーに変換する酵素を使った資源の開発は次世代のバイオ燃料として注目されています。

バック・トゥ・ザ・フューチャー』でデロリアンを動かす燃料に生ごみを使っていましたが、そんな時代もいつかやって来るかもしれません。

 

さてシロアリはセルロースを酢酸にして、それを栄養として利用しているそうです。ということは身体にはたくさんの酢酸が含まれているわけで、食べると酸っぱそうです。

考えて見るとアリも蟻酸を持っているので酸っぱいはずです。こんなところでも似た者同士みたいです。

 

今回はここまでです、読んでいただきありがとうございました。