サハラ砂漠はアフリカ大陸に存在する世界最大級の砂漠です。
なぜ最大ではなく最大級と言い方になるかと言うと実は砂漠の定義は「年間降水量が10㎜未満の土地」となっています。すると世界最大の砂漠は南極大陸になってしまうからなのです。一面氷に覆われた南極が砂漠になってしまうというのは驚きです。
サハラ砂漠の最高気温は計測上58℃、最低気温は氷点下まで下がるという寒暖差。雨がほとんど降らないという気候。生物が暮らすには過酷な世界です。
そのためサハラ砂漠で暮らす生き物たちは特殊能力を身に着けてきました。今回はその中でも特徴的な砂漠を信じられないスピードで駆け回るサハラギンアリ(Cataglyphis bombycina)の話です。
〇太陽光に負けない銀色の体毛
サハラギンアリはその名の通り全身が銀色に輝いています。これは体毛によって覆われているからです。白銀色によって効率的に光や熱を反射し自身の体温が上がるのを防いでいます。研究によれば5~10℃ほどの体温低下が可能になっているそうです。
〇60℃を超える砂上を移動するためのスピード
サハラギンアリは体温が53.6℃を超えると死に至るといわれています。昆虫は自分で体温を調節する機能を持っていないため熱や寒さに弱いという特徴があります。
サハラ砂漠の太陽光に晒された砂は60℃を超えるそう。普通に立っているとあっという間に死んでしまいます。そこでサハラギンアリは熱が全身に移る前に足を動かし続けるという戦略を取りました。
その結果、速度は驚くことに秒速約85㎝。これは一般男性の平均歩行速度より若干早い位だそう。つまりのんびり歩いているとその横をアリが追い抜いていくという、にわかに信じられない景色を見ることになります。
しかしいくら足に自信があっても、いつまでも砂漠の上にいることはできません。
彼らに許された活動時間は朝日が昇ってからのわずか10分。この短い間に砂漠で死んだ生き物たちを巣穴に持ち帰らねばいけません。それ以上は命に係わるので延長は利きません。それ以外の時間帯は巣穴で暮らすことになります。
巣穴から一斉に出てきてすごい勢いで散って行ったかと思うとわずか10分後には誰も居なくなるという、まるで暑さのせいで幻でも見ていたのかと思うようなアリなのです。
地球温暖化が進む中、将来的には人間もサハラギンアリのように冷房の効いた建物から建物へと死にそうな暑さの中、最短距離で移動する羽目になるかもしれません。
少しずつですが温暖化を防ぐためにできることをやっていきたいものです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。