赤十字、赤新月……etc.

赤十字赤新月……etc.

 

白い背景に赤の十字。

病院といえば思わず思い浮かべてしまうくらい有名な記号ではないでしょうか。

国際赤十字赤新月運動(「赤十字運動」)によって運営される戦争や天災時における傷病者救護活動を中心とした人道支援団体のシンボルマークということになります。

つまり国際機関の赤十字運動から許可をもらった団体しか使えない重みのあるマークなのです。

因みに日本では日本赤十字著作権を持っていて、許可なく使用した場合違反者は6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に科せられる法律があるほどです。

 

さてこの赤十字一体どういう意味があるマークなのでしょうか。

赤十字条約とも呼ばれるジュネーブ条約では、赤十字運動のきっかけを作ったアンリ・デュナンがスイス出身であったため、敬意を示し白地に赤十字といったデザインになったと説明されています(スイスの国旗は赤の背景に白十字)。

 

ところがこの説明に納得を示さない国がありました、オスマン帝国です。

オスマン帝国イスラム教国家、赤十字の十字はキリスト教のシンボルである十字架ではないかと不信感を持ちました。

もともと11世紀から13世紀にかけて、十字軍遠征によってその存在を脅かされてきた歴史のあるオスマン帝国にとって、この十字というシンボルのもとで「人を救おう」ということには抵抗があったのです。

そこでオスマン帝国赤新月(白地に赤の三日月)をシンボルとして使用することを表明し参加することになりました。

現在では全187か国中の34か国がこの赤新月を使用しています。

 

このシンボル論争、キリスト教イスラム教といった宗教の問題が根にあったのですが、中東にはもう一つ大きな宗教とそれを信じている国家がありますね。

そうユダヤ教です、ではユダヤ教を国教とするイスラエルは一体どんなマークを使用しているのでしょうか。

イスラエルの団体(マーゲン・ダビド公社)はユダヤ教のシンボルマークであるダビデの星を使った「ダビデの赤い盾(白地の背景に赤いダビデの星)」を使うことを主張しましたが認められませんでした。

赤十字運動は国を超えた人道支援団体であり一つのシンボルのもとで皆が活動するという理想があったためシンボルが増えることには慎重だったのです。(実際、オスマン帝国が新赤月というシンボルを使うことにも当初反対していました。)

そのためイスラエルの団体は活動こそするものの赤十字運動の正式なメンバーではない状態が続きました。

問題が動いたのは2005年12月8日のことでした、赤十字赤新月国際会議総会で宗教的に中立的なシンボルとして赤水晶(白地の背景に赤いひし形)を採用することにしたのです。

現在イスラエルはこの赤水晶のシンボルを使用して、2006年6月から正式な赤十字運動の一員として参加しています。

ちなみに海外で活動する際は派遣先の国から許可がおりれば、ひし形の中にダビデの星をあしらっても良いことになっています。

 

今は使われなくなった赤獅子(白地の背景、太陽を背にし剣を掲げた赤いライオン)というものもあります。

オスマン帝国赤新月を主張した際、イランもこの赤獅子を主張し許可を受けていたのです(この獅子は古代ペルシャから使用されていた伝統的シンボル)。

Wikipedia赤十字社のページにも掲載されていますので良かったら見てください、かっこいいですが明らかに異質な感じを受けます。

このシンボルは使われなくなっており、現在イランでは赤新月が使用されているようです。

 

 

こうしてみると世界史で習った遠い昔のことが今現在にも影響を与え続けているのだなと考えてしまいます。

そして日本で何気なく使われている赤十字が、世界では非常識だという見方もあるというのは多種多様な文化があることを再認識させられます。

 

それでは今回はこの辺で失礼いたします。