クマノミ_ニモが絶滅してしまう?

クマノミ_ニモが絶滅してしまう?

ディズニーの映画2003年公開の『ファインディング・ニモ』は人間の手に渡ったニモを助けるため、ニモの父マリーンと忘れっぽいナンヨウハギのドリーが様々な冒険をする物語です。

ところでニモは一体何という種類の魚かご存知でしょうか。日本のサイトでオレンジに白と来れば定番のカクレクマノミとなっていますが、実はピクサーやディズニーの英語版のサイトでは簡潔にa Clown Fish(クマノミ)としか説明されていません。つまりニモは必ずしもカクレクマノミとは限らないわけです。

ニモをよく見てみるとオレンジと白の縞模様の間に黒の縞模様があります。カクレクマノミはこの黒の縞がない、またはあっても細いそうです。でもニモはしっかりとした黒い縞があることからニモのモデルになった魚はクラウンアネモネフィッシュでも良さそうです。しかし素人目にはこの見極めは難しくどっちがどっちか見当がつきません。

そこで生息地に目を向けて見ましょう『ファインディング・ニモ』の舞台はグレートバリアリーフ、実はこの海域にはクラウンアネモネフィッシュは生息していますがカクレクマノミはいないのです。結局ニモはクラウンアネモネフィッシュと考えて間違いなさそうです。

 

そんなニモの仲間たちが今、絶滅の危機に瀕しているそうなのです。

クマノミはサンゴとの共生が知られています。サンゴは棘皮生物の一種で刺胞細胞に獲物が触れると、有毒な物質の入った針が発射され、それを受けて弱った生物を捉えています。そう考えるとサンゴの樹海は、魚にとっては危険極まりないものです。ところがクマノミはこの危険地帯で悠々と泳ぎまわり、敵から身をひそめることさえできます。というのもクマノミの体表には、刺胞細胞への刺激を緩和する物質が分泌されていることが分かっています。

もうひとつクマノミの不思議な特徴があります。クマノミは生まれるときは皆オスで生まれてきます。皆最初は兄弟なのです。しかし、これでは子孫を残すことができません。メスのクマノミはどこにいるのか、驚くべきことにクマノミはオスの集団を最初につくると、その中の一番体の大きい活発なクマノミがメスになっていくのです。

 

パプアニューギニアにあるキンベ島では、今サンゴ礁の急速な白化現象が起こっています。原因は水温の急激な上昇。今では白くなってしまったサンゴ礁の中を泳いでいる様子が記録されています。この地域では、ひとつのサンゴ礁にメス一匹、性的に活発なオス一匹、そして性的におとなしいオスの群れが棲んでいます。サンゴ礁の砦に暮らすことで安定した集団を維持することができるからこそ、彼らはオスからメスへの性転換、そして子孫の繁栄を可能にしているのです。

ところが、白化したサンゴ礁は死んでしまっているので、毒針を使ってクマノミを守ってくれることはありません。さらに押し寄せる波によって白化したサンゴ自体が風化して無くなってしまいます。彼らは路頭に迷う寸前なのです。

こうなってしまうと外敵に直接さらされるため集団は維持できません、その上偶然パートナーに出会うとしても確率的に会えるのはオスばかり、オス同士が出会う度にどちらかが性転換をする必要に迫られます。何にせよ問題が山積みなのです。

 

多くの動物が鳴き声やフェロモンなどを使って遠方に居るはずの異性にアピールをします。広い海の中で、小さなクマノミが出会う確率は非常に低いものです。クマノミは進化の過程の中で「それならいっそ最初から同じ場所に集団で暮らしていて、適役が女性になればいいじゃないか」という奇想天外な答えを出すに至ったのです。

ところが、いまその大前提だった家がなくなってしまいそうなのです。彼らを救うためにも少しでも地球温暖化を防ぐ方法を実践したいものです。

 

今回はこのあたりで失礼します。ここまで読んでいただきありがとうございました。