アリによく似た生き物たち① アリグモ
部屋の窓を開けようと近寄ってみると、見慣れた姿の虫が窓を這っているのが目につきました。黒くて丸い団子が三つ連なったような姿に、頭ほどもある触覚は直角に折れ曲がっています。このアリ困ったことに隙間から内側に入り込んでしまったようです。ティッシュを採って軽くつまんで外へ捨てようとしたとき、捕まることを嫌がったアリが決死のダイブを試みます。
すると不思議なことが起きました、アリは床につくことなくティッシュからぶら下がるような形で止まってしまったのです。ティッシュを揺らすとアリも同じように揺れています。よく見るとアリのお尻から細い糸が出ているのが分かりました。この特徴はクモのものです。そうこれはアリにそっくりに擬態するアリグモだったのです。
早速捕まえて見て虫眼鏡で見て見ると、なかなかの変装ぶり。
クモとアリは進化の過程から見ても全くの別種です。アリをはじめとする昆虫は節足動物門、六脚亜門で名前のとおり脚の数が6本あり、体のパーツは頭・胸・腹と3つに分節され、そして触覚があります。
一方のクモは節足動物門、鋏角亜門で足の先に爪があるのが特徴的でクモは8本の脚があり、体のパーツは前体、後体の2つのパーツに分かれています。昆虫のような触覚はありません。
ところがアリグモは一番頭に近い一対の脚を常に持ち上げ頭にぴったりつけて、まるで触覚のように見せているのです。そのため昆虫のように6本の脚で動き回ることになります。さらに体のパーツも後体がくびれてあたかも胸と腹があるようになっているのです。そのため一見した感じではアリにしか見えません。
さてアリグモは簡単にオスとメスを見分けることができます。それは口元にある上顎に相当する鋏角の大きさです。オスは頭ほどの大きさのある鋏角がありますが、メスには小さな物しかありません。さらによく見ると眼も2つ以上ついています。
見分けが難しいとも言われていますが、アリグモはクモの仲間らしく動きが機敏で飛び回るような動きをしているのでしばらく見ているとすぐにわかると思います。
さて、こうなってくると気になるのはどうしてアリグモはアリの姿に似ているのかということです。この姿になることで一体どのような利点があるのでしょうか?
子供の頃見た昆虫図鑑には、捕食対象であるアリに化けてあたかも仲間のような顔をして近づき食べてしまうと言うものでした。
ところが、アリグモが積極的にはアリを食べていないそうなのです。そのためアリに化けるのは外敵から身を守るためのカモフラージュとも言われていますが、未だにその外敵の正体が分かっておらず理由の全容は明らかになっていないそうです。
普段何気なく見ているアリ、よく見ているとアリグモが紛れているかもしれません。
たまには覗き込んで見るの一興というものです。
今回はこの辺で失礼します。
ここまで読んでいただきありがとうございました。