庭の隅からお送りいたします。③タカラダニ大量発生中

庭の隅からお送りいたします。

3.タカラダニ大量発生中

                                                                                                    

夏に近づき暑さも増してくるとコンクリートの上を無数に動く赤い点が見える。大きさは1mm~3mmほど、よく目を凝らしてみるとちゃんと脚も生えている。脚の数は左右4本ずつで8本。たまにクモの子どもと間違えられるがこれはれっきとしたダニの一種でタカラダニだ。顕微鏡で観察すると体の表面に細かい毛が生えているのが観察できる。

 

ダニと聞くと噛んだりしないかと不安になるが、このダニの仲間は大きな動物には興味がないらしくあてもなく歩き回っては、もっぱら昆虫や花粉を食べるのに専念するそうだ。そういう意味では益虫に違いないのだが、大量に発生し恐怖心を煽るためか不快害虫として名が知れている。

 

さてそんなダニなのだが一体どういう風の吹き回しでタカラダニの名前がついたのだろうか?その命名の由来はタカラダニの幼虫時代に秘密がある。タカラダニの幼虫も真っ赤な色をしているが、その生態は寄生であり特定の虫にくっついて栄養を吸うことで生活している。彼らは赤色の紡錘形をしており、それをくっつけた虫がまるで宝(おそらく宝石のこと)を身に着けているように見えたということらしい。くっつかれて栄養を奪われている虫からすればお宝どころかお荷物なのだが、傍から見ている人間は暢気なものである。

 

日本で害虫としてコンクリートの上を歩いているタカラダニは、カベアナタカラダニという種類らしい。「壁の穴に棲む」から、そんな名前がついたのだろうと思っていたらそうではなく「壁に棲むアナアカダニ」であるらしく、このアナがさすのは目の後ろに開いている穴だそうだ。カベアナタカラダニは寄生をせず幼虫の頃から歩き回って餌を見つけるという、食べるものは確認されている限りで花粉やアブラムシなどの小昆虫を食べており、この種も人間に害はないとのこと。興味深いのは歩いているのがすべてメスらしく、オスが見当たらないことで単為生殖によって子孫を増やしていると考えられている。とは言えオス自体が存在しないで卵からも一匹たりとも孵らないのか、孵ってはいるが生殖をしたらすぐ死んでしまうのか、はたまたオスは壁の隙間から出てこない引っ込み思案なのか詳しいことは分かっていないらしい。。

 

カベアナタカラダニはコンクリートの上を漫然と散歩をして時間を潰しているように見えるが、実はそうではなくコンクリートの表面についている花粉をいそいそと採っているらしい。ちなみにカタツムリがコンクリートの上を這っている姿を見ることがあるがあれはコンクリートに含まれるミネラルを吸い上げているとのこと。何の変哲もないコンクリートが生物ごとにまったく違う重要な意味を与えられているのを思うと不思議な気分になる。

 

日本では5月下旬にタカラダニの成虫が最も多くなる。コンクリートを這っている姿を見ると、春もそろそろおわるんだなぁという感覚を思い起こさせるため、季節の風物詩のような存在になっている。害虫扱いされていると言っても実害はないので適度な距離を保ちながら付き合っていくのでいいかなと思っている。

 

余談だがカベアナタカラダニを変換しようとしたら「壁あなた身体に」という何ともミステリアスな言葉になり思わずにやけてしまった。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

以上庭からお送りしました。

 

参考サイト

カベアナタカラダニの生態と防除

http://www.pestcontrol-tokyo.jp/img/pub/070r/070-03.pdf

 

東京都健康安全研究センター 研究年報 第60号(2009) 和文要旨

http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/journal/2009/abs-4.html

 

ダニマニア宣言 やっぱりダニが好き! 第2話 ダニとたわむれる夢をみた

https://kagakubar.com/mania/02.html