庭の隅からお送りいたします。①ダンゴムシのはなし

庭の隅からお送りいたします。

 

2.ダンゴムシのはなし

植木鉢を持ち上げるとそこには狭いながら独特の生活圏が顔を出す。暗くてじっとり湿度の高い空間にはいつもの顔ぶれがある。ムカデ、ナメクジ、ゴミムシ、そして今回の主役ダンゴムシだ。ダンゴムシは何か危険が迫ると団子のように丸くなる姿からその名前がついた。丸くなって外部から身を守ると言う発想は決してダンゴムシの専売特許ではなく、マンマルコガネ(全長5mmほどの甲虫でその身体の丸め方は洗練されており造形美すら感じる)やイレコダニ(こちらも小さく1mmもないが丸まることが確認されている)が居て、哺乳類にもアルマジロハリネズミと種を超えて存在している。ダンゴムシは一風変わっていて、特徴的なのはその身体の作り。体の外殻を次の外殻に収納している。例えるならばトランプカードを重ねて一枚の状態にしておいて、それを広げて扇状にするような感覚に近いだろうか。歩いているときは重ねていて、団子になる時に全開にするのだ。そういう構造もあり身体が思いのか動きは非常にゆっくりとしており捕まえやすい。

日本には150種類ものワラジムシ目(ダンゴムシの仲間)が存在しているらしい。庭でよく見かけるダンゴムシオカダンゴムシで、ヨーロッパ原産。明治時代に入って来て、人目に入ってくるようになったのは昭和になってからだったらしい。最近は新しくハナダカダンゴムシが入ってきており日本で確認されたのは1990年代のことだそうで横浜・神戸を起点に広がっているらしく、この分布拡大は近年日本に入って来て騒ぎになったヒアリと同じでおそらくコンテナについてきたのだと思う。

仲間にワラジムシがいるが、これは見た目がダンゴムシによく似ているがじっくり観察すると少し平べったく刺激を加えても丸まれず素早い動きで逃げて行ってしまう。ダンゴムシやワラジムシなどの仲間は等脚目の名前のイメージだったのだがいつの間にかワラジムシ目になっていた。ワラジムシ目では10亜目中ワラジムシ亜目以外は水中暮らしのものが大半で誤解を招く名称ではないかという批判もある。

ダンゴムシに関して興味深いのはオカダンゴムシに様々な色があることで、赤っぽいのから黄色っぽいやつ、体の半分が白っぽいやつ、青いやつと幅がある。赤や黄は個体差らしい。半分白いやつは脱皮中で、ダンゴムシが脱皮する際にまず後ろ半分を脱いで、後日前半分を脱ぐ。そのため上半身だけ白いダンゴムシがしばらくうろうろすることになる。どうして一気に脱いでしまわないのか?一説には脱ぎたては身体が柔らかく脚がしっかり動かせないので移動手段を残すためや、柔らかい部分は水分の蒸発がしやすいので乾燥防止のためといった理由があるらしい。

そして青いダンゴムシは今回調べて初めて知ったのだが、単なるレアカラーではなくイリドウイルス科に感染した個体だったらしい。病気が進行する程青みが増していき最終的に死に至るそうで、青くなってから大体1~2カ月で死んでしまうそう。珍しい青いやつがいるなぁと喜んでいたのだが、ダンゴムシの立場になって考えて見ると複雑な気分になった。

ワラジムシ目は仲間に港でよく見かける恐ろしいほど動きの速いフナムシ(防御力を捨て足の速さに特化した姿。実際に見たことがあるがゴキブリよりも速い)や海に棲息する巨大ダンゴムシの名で注目を集めていたダイオウグソクムシ(全長40㎝を超える巨体。丸まろうとするそぶりは見せるが丸まれない姿に愛嬌がある)、魚の口に寄生するウオノエ(海釣りをして釣れた魚の針を取ろうと口を開けた途端、目に入りびっくりする。見た感じは大型の白いダンゴムシ。鯛に住むのはタイノエ、フグに棲むのはフグノエと魚ごとに種類が異なる)などがいる。

ワラジムシ目でないにも関わらずそっくりな形に進化したタマヤスデやヒメマルゴキブリなども存在している。ちなみにダンゴムシの学名はArmadillidium(アルマジリディウム)で、アルマジロがその名の由来になっている。さらにさかのぼるとアルマジロは「武装した」を意味するアーマードから来ているとのこと。種を超えても「丸まることで防御力を高める」といった進化を遂げた種を見ていると進化の奥深さを感じずにはいられない。

 

余談だがバンダイカプセルトイで全長140mmにもなるダンゴムシを販売している。身体の構造を細部まで研究して再現したらしく可動部もしっかりしていてちゃんと丸めたり広げたりできるらしい。しかもガチャポンから出るときにカプセルに入った状態ではなくて丸まった姿のまま出てくるというこだわりよう。面白そうなので探しているのだが今のところ見つかっていない。

 

ここまで読んで下さりありがとうございました。

以上庭からお送りいたしました。