ピンノ 貝の中で悠々自適な引きこもりライフ

ピンノ 貝の中で悠々自適な引きこもりライフ

あさりのお味噌汁を食べていると、貝の中に小さなカニが入っているのを見かけたことはないでしょうか。白みがかった姿、脱皮したてのような柔らかい甲羅、可愛らしい?瞳。昔、親からは「アサリが食べたカニが入ってるのよ」と教えられたのですが、実はこのカニ食べられていたのではなく、自らアサリの貝のなかへ入り込んでいたようなのです。今日はカクレガニことピンノと呼ばれる小さな甲殻類のお話です。

 

ピンノという名前はPinnotheresという学名に由来します。様々な種類が居ますが基本的な大きさは2~4㎝ほどで貝の中に入るのに最適な大きさです。幼生か成体になった直後に貝に入り込んでいるのではないかと考えられています。

 

貝の殻は外からの敵の攻撃や、圧力に対抗するために進化したと考えられています。そういう意味では内側に入ってしまえばこれほど安全な場所もないと言うわけです。しかし困るのはパートナーをいかにして見つけるのかということ。貝の中に引きこもっていたのではなかなか出会いもありません。それにいくらピンノが小さいとはいえ、夫婦で生活されたら貝の中がぎゅうぎゅう詰めになってしまい大変なことにならないのかという疑問もわきます。

 

実は引きこもったまま出てこないのはメスのピンノで、オスは積極的に外へ借り出していくそうなのです。代わりにオスの身体はメスの半分ほどの大きさで、甲羅も固くなっています。運がよければアサリの中に大きいピンノと小さいピンノが入っている姿が確認できるようです。とはいえ広大な海でひとりメスを求めてさまよっているオスピンノは確認されていないらしく詳しい出会いの様子は不明なようです。

 

ニュージーランドの大学の研究チームが2015年に水槽でパートナー探しをするオスピンノの様子が動画で撮影されています。この記事ではカクレガニが貝の隙間を4時間近くもくすぐって、やっと中へ入っていく姿も確認されました。くすぐり続けて麻痺させてその隙にはいるのではないかと言われています。

 

ここからは想像ですが、おそらく貝がパートナーを探すときに、中のピンノ達もそれに便乗してパートナーを得ているのではないかと思います。貝のオスとメスが接近すると、ピンノ達も浮足立って「あそこに待ち焦がれたパートナーがいるかもしれない」と準備し、そこでオスが一瞬の隙を狙って飛び出しているのではないでしょうか?

フェロモンで大まかな位置が特定できるにせよ、あてどもなく放浪するには海は広すぎます。パートナーのところまで家が送り届けてくれるならこれにこしたことはありません。

 

ちなみにアサリを家にしているのはオオシロカクレガニという種類で、他にもカキに居住するカギヅメカクレガニや、サザエの胃の中に暮らすという強者もいるそうです。これらは皆カクレガニ科に属するのでみなピンノです

 

動くお家と言えば、『ハウルの動く城』や迷い家などファンタジーの世界だけのお話かと思っていたら、ピンノにとってはごく当たり前のことだったようです。

貝の中からカニが出てきたら、カニの赤ちゃんではなく立派な大人。それは小さな家のそれまた小さな住人「ピンノ」なのです。

 

今日はここまでです。読んでいただきありがとうございます。

 

参考URL:

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/051200092/