アリマキとアリ 支配者は誰なのか?
アリ植物というものをご存じでしょうか?
アリ植物はアリと共生するのを選んだ植物の中でも特にいつも離れず一緒に暮らすようになったものを指します。熱帯域に生息しており日本ではまだ厳密にこれだという種は存在が確認されていません。
アリが棲むための場所や食料としての蜜を提供する代わりに、アリ植物はボディーガードの役割をアリにしてもらいます。
こういったお互いが利益を得る共生は相利共生と言います。ちなみに片方だけが利益を得てもう一方が得も損もしないものは片利共生、片方が利益を得てもう一方が損をするものを寄生と言います。
さてアリ植物の中にアカシアという木があります。日本でも見ることができ3月から5月にかけて黄色の玉のような花が連なる様子はとてもかわいらしいです。
紛らわしいのですが日本でよくみかけるアカシア蜂蜜はニセアカシアの蜜なので別物です。
さてアカシアの仲間はアリと共生関係を行うものが居ます。中央アメリカのあるアカシアもアリと共生していたのですが何とこの蜜にはアリが他の植物の蜜を食べられないような仕掛けがあったのです。
アカシアアリが糖分を分解するにはインベルターゼという酵素が必要なのですが、不思議なことにアリマキに住むアリにはインベルターゼを作る能力が失われていました。実はアカシアはキチナーゼという別の酵素を蜜に混ぜ羽化したばかりのアカシアアリの体内でインベルターゼが作れないようにしてしまうというのです。そしてそれを補うかのようにアリマキ内ではインベルターゼでしっかり栄養にできる形の消化しやすい蜜が提供されるのです。
こうされるとアカシアアリは別の植物が分泌する蜜を食べても体内で分解できず栄養として処理できません。つまりアカシアアリはこのアカシアと暮らさざるを得ない状況になってしまっているのです。
果たしてアカシアアリがアリマキを利用しているのか。それともアリマキがアカシアアリを利用しているのか。分からなくなってきます。
自然界での裏切りを防ぐための攻防戦には目を見張るものがあります。
ふと我々が生きている日常世界に目を戻すと実は便利だと思っていたけれども、結局はそれに依存しないと生きていけなくなったのではないかと思うような事例が思い浮かばないでしょうか?
自動車や電車、新幹線、飛行機によって遠くまでいけるようになったり。冷蔵庫で食べ物が長く保存できるようになったり。テレビやインターネットによって時間差なく情報を得られるようになったり。
でもそれらによって体力が落ちたり、できることが多くなって逆に疲れ切ってしまったり。
私たちは使ってあげていると思っている家電や乗り物に実は使役されているのかもしれませんね。
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