ミラー・オーキッド ハチにそっくりな花で誘惑する

ミラー・オーキッド ハチにそっくりな花で誘惑する

 

春になると色とりどりの花が咲くので見ているだけ楽しくなります。

この色はただ美しいだけではなく花粉を運んでくれる生物へのアピールになっています。ここに美味しい蜜がありますというのを表しているわけです。ただし蜜を作るのにもコストがかかっています。ただで配っていると自身への負担が大きすぎて枯れてしまうかもしれません。そのため蜜を出すにはそれなりの戦略があるのですが一般的には花粉を運んでもらい受粉するためということになるようです。

植物の中には蜜以外の強みで勝負するものが居ます。

例えばミラー・オーキッドの花は楕円形の唇弁中央が青黒く輝きその周りは黄色のふちがあり、さらにその外側を茶色の毛が多いますがとても派手な色とは思えません。

しかしその形はまるでそこに暮らしているハチのメスにそっくりな形になっているのです。

青黒い部分が青空を反射する背中の部分に該当しその周辺の色も形もツチバチ科のメスに似せてあります。それどころかメスのフェロモンに似た化学物質まで分泌するというこだわりようです。

交尾をしようとしたオスがこの花にとまることによって花粉が着き、別の花に交尾しようととまることで受粉が完了するのです。

本によればこのようなタイプのランがヨーロッパには100種ほど知られているらしく色々な昆虫に対応しているようです。

何千万年ひょっとすると何億年と試行錯誤を繰り返してこの形にたどり着いたのだと思うと何とも不思議な感じがします。だって植物自体は自分がツチバチにそっくりだということは知る由もないのです、そしてツチバチもまたこの植物が自分に似るように品化したことに思いを巡らすこともないのでしょう。それにも関わらず両者は幾度も繰り返される自然淘汰の末に目を見張るような完成度で似た者同士になるのですから本当にこの進化というシステムは興味が絶えません。


出典:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0909/feature05/gallery/02.shtml

参考URL:

特集:ラン 甘美なる愛の罠 2009年9月号 ナショナルジオグラフィック NATIONAL GEOGRAPHIC.JP (nikkeibp.co.jp)

参考文献:

『植物の私生活』デービッド・アッテンボロー山と渓谷社