ノミバエ 首切り虫の残酷な生き方

ホラー注意です。

 

南米のある日。

アリはいつものように巣から出ていくと腹に痛みを感じた。

そこには小さなハエが居てこの痛みの原因のようだった。走り距離を空け何とか難を逃れるといつも通りの業務に戻った。餌を探し、仲間と隊列を組み、時には大きな敵とも戦った。

そういう日々が何日か続いた。調子が悪くなり動きが鈍くなった。心配した仲間が餌を分けてくれたりするので命に別状はなかった。

次の日、そのアリは無性に遠くへ行きたくなった。どうして自分でもそう考えたかよく分からなかったがとにかく誰も仲間のいないほど遠くへ足を運んだ。

 

一息つこうとした次の瞬間、首がぽとりと落ちていた。

しばらく意味も分からず体を動かそうとするが何も起こらない。触覚と顎を空しく動かすがやがてそれもできなくなった。

 

どれくらい経ったのか頭を突き破り中からハエが出てきた。その顔はあの時アリを刺したハエにそっくりだった。

 

 

皆さんは首が落ちるという恐怖感もったことがあるでしょうか?

私は当時乙一さんの『ZOO』という短編集に載っていた「神の言葉」と言う作品でしばらく思い悩まされるようになりました。粒ぞろいの短編集なのでホラーが平気だという方は読んでみてください。

 

首から上と言うのはその人間らしさを表す特に重要な部分であるように思います。生命機能だけでなく理性を管轄する脳があり、その人を誰か識別するのに重要な顔があり、五感の多くが目や耳、鼻、下といった感覚器官に集約されています。

その頭と体をつなぐ重要な経路になっているのが首と言うわけですが、逆を言えばそこを絶たれれば一貫の終わりになってしまうという弱点であることも確かなわけです。

そのため歴史の過程では効率的に生命を終わらすことのできる斬首や首吊りが刑罰の一つとして重要な位置を占めてきました。

 

生物界でもこの首に注目した生き物たちが居ます。その一種がタイコバエです。

そしてそれはある日突然首がポロリと転がり落ちるという衝撃的なシーンが訪れます。

 

その頭の中を覗いてみるとハエの幼虫が巣くっています。このハエはタイコバエと言います。アリの胸に卵を産み付けると、やがてそれが孵化し、幼虫は首を通って頭に到着します。そしてその中である程度大きくなると首を溶かして落としてしまうのです。

そして頭を巣にして、残った脳を食べさなぎになります。普通動物は死んだ動物を食べようとしないので格好の隠れ場所となります。やがてさなぎから成虫が生まれてくるというわけです。頭に入った後に行動を操っているとも言われています。首が落とされる直前のアリは湿っていて緑が豊かな環境を目指して歩き始めるそうです。

 

アメリカでは外来種を退治するために特定の主だけを相手にするタイコバエを導入する方法を試した州もあるそうですが、アリの繁殖力の方が強く根絶までにはいかなかったそうです。

これは普通に考えられることで、ハエも将来の食糧まで食べつくすまで増えれば絶滅するのは目に見えています。そうすればハエの繁殖力はアリより低いのは目に見えていたと思ってしまうのですが・・・・・・。しかし農薬などに頼らない方法を模索するのはとても大事なことだとも思います。

 

あとは人間に寄生して首を落す生き物が誕生しないことを願うばかりです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。